一緒に、遊撃隊を作らないか。(9)

あれから1ヶ月後・・・。
フォックスは久しぶりに宇宙アカデミーに来た。1ヶ月前とはうって変わって重々しい雰囲気が漂っていた。フォックスが廊下を歩いていると周りから何かささやきが聞こえた。“おい、フォックスだぞ。アイツの父親、哀れだったな”とか“元コーネリア軍のエースパイロットの息子だったのか~どうりですごい腕前だったな”とか・・・しかし、フォックスはそんなささやきを聞こうともしなかった。
講義には出るものの講師の内容なんかまるで聞いていない。フォックスは空を眺めながら、父さんががいなくなってこれからスターフォックスはどうなるのかなと考えていた。
スリッピーはフォックスのことが心配だった。スリッピーの耳にもフォックスの父さんが亡くなったことを聞いたからだ。
スリッピーはフォックスを励まそうと“いや~だんだんと湿ってきたからオイラにとっては嬉しい季節になったよ。”とか
“この前のあの番組見た!?あれはすごかったよ~、オイラにとってはびっくりとすることばっかりだったよ~”など、明るい話題を持ちかけてはみたけどフォックスはうなずいただけで何にも答えなかった。




ある晴れた日の夕方。すべての講義が終わって寮に戻ろうとしたときスリッピーの声が聞こえた。
「フォックス~。なあ、フォックス!ついにできたよ~。」
スリッピーがフォックスに見せたもの、それはあの時スリッピーが作っていたメカだった。
「まだ開発途中だけど、性能を試したくて。一緒に外に出て試そうよ。」
フォックスはあんまりのり気ではなかったので帰ろうとしたけど、スリッピーに手を引っ張られて無理矢理航空演習場に向かっていった。放課後の航空演習場はシミュレーション室と事務所以外はよほどのことがない限り使わないし、いずれも室内なので外に出ても誰も邪魔にならない。
そして、フォックスにあの時スリッピーが作っていたメカが手渡された。スリッピーは少し離れて
「フォックス―。オイラがボールを投げるから、それを前に出してみてよ~」
と叫んだ。そして、スリッピーは野球ボールを精一杯の力を使って投げた。
(スリッピー・・・、何がしたいんだ?)
と思いつつも、スリッピーの言ったとおり前に出してみた。すでにボールがフォックスにめがけて投げていたのでフォックスは避けようとした。
(!!!)
そのとき、何かが作動して不思議な空間に覆われた。いや、不思議な壁がフォックスの目の前に現れたのだ。瞬間ボールが当たって、勢いよく跳ね返って飛んでいった。あまりにも勢いが強かったのでスリッピーはあわわわ・・・と避けてしまい、ボールはそのまま飛んでいった。
しかし、スリッピーはボールが飛んでいってしまったことよりもメカの性能に喜んでいた。フォックスは唖然として腰が抜けてしまった。
「やった~まさかあそこまで勢いよく跳ね返すとは思わなかったからびっくりだよ~」
「・・・・・・・・・。」
スリッピーは子供のようにはしゃぎこんで、フォックスは黙り込んでいた。というのもこのメカ、もしもボールではなくてレーザー光だったら・・・フォックスは背筋がゾ~・・・とした。


「・・・・なあ、フォックス。・・・フォックス~!!」
スリッピーの声が聞こえてきたとき、はっとした。周りを見渡したらスリッピーの顔が近くにいることに気づいた。フォックスは慌てて後ずさりをした。息が上がって声が出ないフォックスに、スリッピーはにこっと笑った。
「オイラ、フォックスに1番最初に試したくてここに来たんだ。・・・フォックスの父さんがこの世からいなくなってしまったことがすごく悲しいのはオイラにも分かるよ。だからオイラ、フォックスを励ましたかったんだ。」

スリッピー・・・・・。オレを励ますためにこれを・・・。なんとも危険な励まし方なんだ・・・。

フォックスが呆然としている中、
「フォックスが今後何を考えているのか分からないけど、・・・・・オイラ決めたんだ。」
スリッピーは真剣な表情をした。スリッピーのこんな表情は始めてだ。フォックスは首をかしげた。
「オイラ、宇宙アカデミーを出たら整備師になろうと思う。フォックスのおかげだよ。フォックスがオイラが作ったメカを喜んでみてた時・・・すごく嬉しかった。ここにきていろんなメカを作って、でも試す人がおらんくて・・・。オイラ何をしていたのかなとずっと思った。でも、フォックスに出会っていろんなメカを見せては試して時にはアドバイスをくれて。それがすごくすごく楽しくて・・・だから、卒業まで友達でいてくれるかい?」
スリッピーがフォックスに向かってにこーと笑った。フォックスはそんなスリッピーの顔を見てスーッと吹っ切れたような、そんな感じがした。スリッピーが夢に向かって走り出している。フォックスはそんなスリッピーを見て以前思い描いていた夢を思い出した。父さんと同じく宇宙を飛び回ることを。そして父さんがいない今、遊撃隊「スターフォックス」はこのままなくなってしまうのではないかと。

フォックスは決心した。自分が父さんの意志を引き継ごうと―。



「誰だ―!!!こんなところにボールを投げたやつは!!」
遠くから野太い声が聞こえた。フォックスとスリッピーはびっくりし、声が聞こえた方向を見ていると・・・カンカンとなっている小太りの講師の姿が見えた。そして、講師の後ろを見ていると・・・窓ガラスが割れているのが見えた。
おそらく、跳ね返ったボールがそのまま窓ガラスに突っ込んでしまったのだろう。
スリッピーはひぇぇぇぇぇぇ~と仰天とし、フォックスはクスッ。と笑った。
その後2人はカンカンに叱られたのであった。

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